イジワル社長は溺愛旦那様!?
上司と部下の、オンとオフ
京都出張は滞りなく終わった。
また湊と夕妃の、上司と部下の日々が東京で始まる。
お昼休みまであと十分という時間、のんびりと仕事をこなしているところで、秘書室の夕妃のデスクの電話が鳴った。
見れば社長室からの内線だ。
キーボードを打っていた手をとめて、受話器を持ち上げた。
「はい、三谷です」
【神尾です。本社の定例会議の予定が一時間遅れてずれ込みましたので、今晩の業界の懇親会には、本社から直接向かうことにします】
「ではお車の用意はどういたしますか」
【本社に頼みますので、不要です】
「かしこまりました」
【では】
そして余韻もそっけもないテンションで、電話は一方的に切断された。
職場なので当然なのだが、この湊の切り替えはすごいと、夕妃は常々思っていた。
だが湊がここまで徹底してくれているから、自分もポカをしなくてすむのだ。ふたりの関係は基本的に秘密なため、これでいいのである。
「社長、なんて?」
正面のデスクに座っている恭子が少し背伸びをして、デスクトップのモニターの向こうから問いかけてくる。