イジワル社長は溺愛旦那様!?
「外寒そう~!」
黒いコート姿の恭子と連れ立って、ベージュのコート姿の夕妃がエレベータ―で一回に降りると、
「あっ、もしかしてランチー?」
同じくコート姿の澄川が近づいてきた。
「あ、澄川君。そうよ、ふたりでランチなの」
恭子の言葉に、澄川が犬のような顔で駆け寄ってくる。
「おっ、俺も一緒に行きたいですっ!」
なぜかかなり気合が入っていた。
「ええーっ、私たち今から限定のグラタン食べに行くんだけど」
恭子がわざとらしく迷惑そうな顔をしたが、
「グラタン好きっす! さ、行きましょう!」
澄川はしっかりうなずいて、そのまま歩き始めた。
「もうっ、仕方ないんだから……」
恭子はきれいに巻いた髪を手の甲で払いながら、隣の夕妃に問いかける。
「大丈夫?」
「え? ええ、もちろん。そういえば前ランチ会でもって言ってたんですけど、そのままになってたのを今思い出しました」
夕妃はバッグからスマホを取り出した。
「あ、あれだったらほかの人も誘ったほうがいいのかな……」
「いやいやそうじゃなくて……呼ばなくていいと思うわ」
恭子は苦笑しながら、微笑みを浮かべる。