イジワル社長は溺愛旦那様!?
「ふぅん……なるほど」
澄川はうんうんとうなずきながら、そして目の前に座る夕妃をじっと見つめる。
「あの、ぶしつけな質問なんだけど」
ぶしつけとはなんだろう。
なにか仕事上でミスでもしたのだろうか。
だが自分は社長秘書であって、澄川の所属する営業部とはあまり関わり合いがないはずだ。
するとなにか、神尾の個人的なことを知りたいのだろうか。
(それはさすがに話せないな……)
夕妃はまじめにそんなことを考えながら、
「なんでしょう?」
と半分仕事モードで澄川を見返す。
「あっ、あのさっ……」
すると澄川が口を開くよりも先に、夕妃の右隣に座っていた恭子がスマホをテーブルの上に置いて、身を乗り出してきた。
「あら、なにかしら。坪内恭子、三十五歳、人妻です。子供はひとりで、夫はふたつ年下よ」
「いやそうじゃなくて~坪内さ~ん……」
澄川がガクッとうなだれる。
「澄川君、空気読みなさいよ。今は楽しいランチの時間なのよ」
恭子がハッキリとそういうと、澄川はご主人様に叱られた犬のようにうなだれた。
「はぁい……すんません……」