イジワル社長は溺愛旦那様!?
樹齢三百年の大木と、若木くらい違う。
自分が男に生まれていたら、朝陽のように大きくなれたのかと思うが、両親はどちらとも平凡な体型だったので、おそらく朝陽が規格外なのだろう。
冷たい風が吹き付けてくるので、夕妃は朝陽に身を寄せるようにして近づいた。
「先輩のとこ行く」
「先輩?」
「猫の餌挙げた人。感想聞いたら、お礼もしたいからうちに来てくれって」
「うち……?」
朝陽が何を言っているのかわからない。夕妃は首をかしげる。
「お店してるんだよ。そこで飯食おうと思って」
「お店って……ええーっ!」
ようやく朝陽の言いたいことが分かって、夕妃は人込みの中立ち止まった。
「それって、今から猫の餌あげた、朝陽くんの先輩のお店に行くってこと?」
「そう言ってるじゃん」
朝陽が苦笑して、立ち止まり振り返った。
「ちょっとー、そういうことなら先にちゃんと言ってよ、あやうく手ぶらだよ!」
お礼したいと言われて、手ぶらで行くのはさすがに抵抗がある。
夕妃は憤慨しながら朝陽に持たせたバッグを持ち、周囲を見回した。