イジワル社長は溺愛旦那様!?
「さっきのヒト、俺にも謝ってきたよ。だから許してやることにした」
そしてすっかり冷え切ってしまった夕妃の背後に回って、コートを着せる。
「じゃあ先輩、また来ますね」
「ああ。また」
「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」
ちょっとした騒ぎはあったが、チェーロの食事は本当に美味しかった。
出来ればまた来たいと思うのは、事実だった。
朝陽と夕妃は、見送ってくれる洋平に手を振ったあと、大通りまで向かう。
スマホをぽちぽちする朝陽の横を歩きながら、夕妃はなんとなく、朝陽の腕に腕を掛けた。
「疲れた?」
「ううん、ちょっとビックリしただけ」
そう答えながら、朝陽の腕をつかむ手に力を入れる。
澄川からの告白は万が一にも考えていなかったので、本当に飛び上がるくらい驚いたのだ。
「モテモテだな、姉ちゃん」
「たまたまだよ……」
「ちなみに、洋平さんに、姉ちゃんは彼氏いるのか聞かれた」
「――ふぅん……えっ!?」
あやうく聞き流しかけたが、それは要するに、自分に対して彼がちょっと好意を持ってくれたということなのだろうか。
「会社には秘密にしてるけど、結婚してるって言ったよ」
「そ、そっか……もしかして人生に三回あるというモテ期かな?」
なんと返していいかわからず、アハハと笑ってしまった。