イジワル社長は溺愛旦那様!?

テーブル席が四つに、カウンター。二十人も入れば満員ではあるが、カウンターにひとつだけ空席がある。
客層もビジネスマンや制服姿のOLがほとんどで、味も保証されてそうだ。


(よし、今日はグラタンにしよう)


意気込んでドアを開け、入り口に立っていた年配の女性に「ひとりです」と告げる。


「はい、カウンターの奥へどうぞ~」


厨房前に、カウンターの一番奥へ座った。


注文を取りに来た大学生くらいの若い男の子が、壁にかかっているハンガーをサッと取って、手袋を外してコートを脱ぐ夕妃に手を差し出す。

特に愛想があるわけではないが、ベリーショートの黒髪は清潔感があり、しっかりしている雰囲気が好ましい。

夕妃にも努力家の高校生の弟がいるので、つい姉目線で好意的に見てしまう。


「ありがとう」


夕妃は素直にコートを渡して、それから椅子に座った。


「グラタンランチください」


するとその男の子は、注文を取る手をとめてカウンターの中に声を掛けた。


「グラタンまだありますか?」


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