イジワル社長は溺愛旦那様!?

そして持っていたバッグを湊の座るソファーの端に置いて、キッチンへと向かおうとしたその瞬間、

「夕妃」

手首をつかまれ、グイッと引っ張られた。


「きゃあっ!?」


不意打ちに驚いて悲鳴をあげたが、体はそのまま背中からソファーに座った湊の腕の中にスッポリとおさまってしまった。


「どうしたの?」


仰向けになった夕妃は、湊に抱かれたまま目を丸くして湊を見上げる。


「どうしたのって……俺に言うべきことはない?」


湊は乱れて頬にかかった夕妃の髪をそっと指で払いながら問いかける。


「言うべきこと?」


不思議に思いつつも、夕妃は首をかしげた。


(なにかあったかな……ただいまって言ったし……朝陽くんとごはんを食べに行くっていうのはLINEで言ったし……湊さんは当然いいよーって言ってくれたし……)


本当に思いつかない。

すると湊はクスッと笑って、夕妃の前にスマホの画面を見せる。


「――うん?」


それはLINEの通話画面だった。右が湊で――左は朝陽だ。


< 202 / 361 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop