イジワル社長は溺愛旦那様!?
カツンと音がして、眼鏡がガラスのテーブルの上をすべる。
(お、お、怒ってる!)
湊が怒ることなんてそうない。というかほぼない。
けれど明らかに今、目の前にいる湊は怒っているし、不愉快そうだ。
澄川に告白されたことを黙っていたから怒っているということがようやくわかった。
言うべきだったのだろうか。
(で、でも、今日、職場のヒトに告白されたんだーって普通言わないよね……? だけど――この態度を見る限り、湊さんは言ってほしかったのかな……)
夫にはできる限り誠実でありたい。
対等で、支えあう立場でいたい。
常々そう思っている夕妃は、湊に抱きかかえられてプルプルと震えながらも、ごくりと息をのみ、口を開いた。
「あの……すみません……確かに、澄川さんに告白されました……あと、朝陽くんの先輩が、朝陽くんを通じて私がフリーかどうか聞いてきたみたいです……」
こんなおかしな報告があるだろうかと思いつつ、夕妃はまじめな顔をして、湊をじっと見上げた。
夕妃の言葉を聞いて、湊は短く、はあっとため息をつく。
「嫉妬して死にそうだ」
「え?」
「誰も俺の夕妃を好きになってほしくない。誰も特別に思わないでほしい。夕妃の良さは俺だけが知っていればいい。俺だけの夕妃でいてほしい……バカな考えだとわかっているが、たまにそう叫びたくなる」
そして湊は、そのまま覆いかぶさるように夕妃を抱きしめた。