イジワル社長は溺愛旦那様!?
「でも……なにかあったら教えてください。お願いします」
こっちは真剣なのだ。思わず詰め寄るような口調になってしまったが、
【わかったわかった。考えておく】
基は苦笑し、そして【そろそろ沙耶を寝かしつける時間だ】と言って夕妃を笑わせた。
沙耶というのは基の妻で、現在妊娠中だった。湊がいうには愛妻家というにはあまりにもひどい溺愛ぶりで、妻の沙耶すら呆れるほどだという。
寝かしつけるという単語からすぐにそれを思い出して、夕妃はなんだかほほえましい気分にも、申し訳ない気分にもなった。
「あの……急にこんなことで連絡してすみませんでした」
【いや。お前は湊の大事な女性だ。だったら俺にとっても家族みたいなものだ。だから遠慮はいらない】
ハッキリとした口調で基はそう言い放つと、今度は少し柔らかいイントネーションで言葉を続ける。
【湊はあまりにも出来すぎるから、みんなあいつをロボットかなにかだと勘違いするんだ。まぁ、俺も昔からずっと頼りっぱなしだったし……その点は反省してる。だから湊にとっては、間違いなく俺よりも、お前が側にいるほうがずっと力になると、俺は思ってるよ】
「基さん……ありがとうございます」
【いや、湊のことよろしく頼む】
「――はい」
夕妃は丁寧にお礼を言って、それから電話を切った。
「私のほうが力になれるなんて……そうかなぁ……だったらいいんだけど」
夫の二十年来の親友からの励ましに、夕妃はじんと胸を熱くする。
こうしたらいいんだとか、悪いんだとか、結局誰にも正解はわからない。
だったら自分は湊のそばにいて、自分がやれることをやるしかない――。
「よし、明日もがんばろうっ……!」
夕妃はソファーから飛び降りて自分の頬をぱちぱち叩くと、湊が眠る寝室へと向かった。