イジワル社長は溺愛旦那様!?
上司と部下に、なる前の・四

「なにもしない。ただ、抱かせてほしい。あなたという存在をこの手で感じながら眠りたいだけだ……」


そして夕妃の体は、ゆっくりと湊に抱きしめられていた。





うまくいかなかった金曜日のディナーの代わりに、ふたりですごした土曜日の夜――。

湊からそう告げられて、夕妃はうなずいた。

ただ抱かせてほしいという湊の言葉が、言葉以上に重く聞こえて、夕妃はうなずかないわけにはいかなかった。
先にシャワーを浴びたのは湊で、彼は一階の自分の寝室で待っていた。


(緊張する……)


夕妃は二階でシャワーを浴びて髪を乾かしたあと、身支度を整えて鏡をじっと覗き込む。

二十四年つきあってきた自分の顔だが、いつもと違う、他人のように見える。
恐ろしく緊張している。

それもそうだろう。
好きな人と一緒に眠るなんて、生まれて初めての経験なのだから。


(でも、一緒に寝るだけ……それだけなんだから、私があんまり緊張したら、怯えてるって思われるかもしれない。実際はそうじゃないんだから……湊さんに悪いよね……よしっ!)


ぎゅっと唇を引き結び、夕妃は無駄に肩や首を回して体をほぐしてから、そのまま気合を入れて階段を降りた。


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