イジワル社長は溺愛旦那様!?
すると湊はふっと笑って、そのままうつむいた夕妃の顔を覆っている髪を手のひらで後ろに流す。
指先が、頬、こめかみ、そして首筋へ移動する。
そして首の後ろに手のひらが回ったかと思ったら、そのまま体を抱き寄せられた。
ふわりと、湊の髪からシャンプーの匂いがした。
上等なリラックスウェアなのだろう。頬にあたるコットンの感触はとても柔らかい。
七分袖の肘から伸びる湊のたくましい腕の筋肉を、パジャマ越しに感じて、夕妃はまたドキドキが止まらなくなった。
「……鼓動が伝わってくる」
耳元で湊がささやく声がとても近い。
「とても速い……壊れないかな。心配になってくるね」
(それは私もちょっとばかり気になるところです。ドキドキ死してしまったら、ごめんなさい……)
夕妃はふふっと笑う。
そのまま顔を上げると、優しく夕妃を見下ろす湊と目が合った。
湊は一瞬なにかを言いかけて口を開いたが――。
結局何も言わないまま、そのまま夕妃の前髪をかき分けると、額に小さなキスを落とした。