イジワル社長は溺愛旦那様!?
(え……?)
一瞬、世界が無音になった。
声が出なくなったというのに、耳すら聞こえなくなったのかと勘違いするくらいに、夕妃の世界に静寂が満ちた。
(湊さん、今なにか言った……? っていうか、結婚って……聞こえたけど。まさかそんなこと……あるはずがないし……)
夕妃はポカンとした表情で湊を見つめる。
だが目の前の湊の切れ長の瞳は、とても真剣だった。
「俺と、結婚してください」
そして今度ははっきりと口にした。
(……っ!)
夕妃の目を見て、しっかりと、湊はプロポーズの言葉を口にしたのだった。
(え、なんで? どうして……?)
「急すぎる?」
湊の問いに、夕妃はうなずいた。
彼が自分を思ってくれているのは嬉しいが、なぜ結婚ということになるのか、夕妃にはとても想像ができない。
すると湊はとても冷静な口調で、言葉を続ける。
「だろうね……。でも、俺はずっと考えていた。運転する車の前に、ウェディングドレス姿のあなたが飛び出してきた一週間前から……。最初は些細なことであなたを可愛く思って、でも一緒にいたらとても心が安らぐと気づいて……それから寝ても覚めても、あなたのことばかり考えるようになって……気が付けば、俺の心はあなたに囚われている」