イジワル社長は溺愛旦那様!?
そして湊は、ふっと自嘲するように笑い、
「だから、悲しいかな、あなたが今なにを考えているかも、わかってる」
どこか苦しそうに、眉を寄せた。
「他人に迷惑をかけることをとても嫌うあなただ。俺のことを憎からず思ってくれていても、身を引くことしか考えていないでしょう」
湊の指摘に、夕妃はギクッと肩を震わせた。
「確かに……あなたは結婚式から逃げてきた花嫁だ。この一週間、あれこれと調べましたが――おそらく相手はあなたを簡単には許さないし、たとえば金銭で、やすやすと解決する問題だとは思えない」
(湊さん、本当にあれこれ考えていてくれたんだ……)
胸の中がちくっと痛くなるが、夕妃はうなずいた。
「でもだからって、あなたをあきらめる理由にはならない。むしろ、あなたを傷つけないために、守るために、俺は他人のままでいられないと、確信しました」
夕妃の手の甲に重ねられた、湊の手に力がこもる。
「だから夕妃さんも、俺をあきらめないでもらえませんか?」
(あきらめないでって……)
確かに彼の言う通り、夕妃は湊を最初からあきらめていた。
彼を好きで、彼も自分を少なからず好意を持ってくれていて――それがわかっていたけれど、現実問題、ずっと一緒にいることは不可能だからと、受け入れる努力をしている。