イジワル社長は溺愛旦那様!?
(湊さん……)
夕妃の大きな目から、涙があふれ、頬を伝った。
(いいの……? 本当に、いいの?)
それを湊はじっと見つめ――どこか緊張していた表情をふっと緩める。
「俺の奥さんになるって、覚悟を決めたようだね。よかった、これであなたを閉じ込めるための塔を建てなくて済む」
(ばか……そんなこと言って……)
夕妃は泣きながら笑って、湊の胸をこぶしで軽く、トンと叩いた。
そしてそのまま、彼の胸に顔をうずめた。
「好きだよ」
湊は笑って、そのまま夕妃の頭の上にキスをする。
(ありがとう……私も湊さんが大好き……)
そんな思いを込めて、彼の腕の中で、夕妃は声もなく泣いた。
彼がくれた、シンプルな“好き”という言葉が、夕妃が背負っている大きなあれこれを軽くしてくれるような気がした。
それから夕妃が泣き止むのを待ってから――ほんの五分程度だったが、湊は夕妃の頬に残る涙のあとを指でぬぐい、チュッと音を立てて額にキスを落とす。
「現実的な対策に向けて、今晩、朝陽くんをここに呼んで話をしよう。いい?」
(うん)
夕妃はしっかりとうなずいて、それから湊をじっと見上げた。