イジワル社長は溺愛旦那様!?

(声、出ないかもしれないけど……)


ゆっくりと口を開ける。


「夕妃?」


湊は一瞬怪訝そうな表情になったが――。


「ぁ……り、が……と……す……き」


長い時間をかけて絞り出したのは、本当に小さな、かすれた声で。
喉が相変わらず締め付けられて苦しいけれど、筆談でもなく、直接声で、自分の意思を伝えられたのは、久しぶりだった。

自己満足かもしれないが、夕妃はどうしても自分の声で、彼に伝えたかったのだ。


(聞こえたかな……)


少し恥ずかしくなりながら、夕妃は自分の唇に指で触れる。

すると湊はハッとしたように、何度もうなずいた。

そしてなぜかぎゅっと眉を寄せて、どこか苦しそうに、一瞬視線を逸らす。


(湊さん……?)


不思議に思い、彼が逸らした方向から彼の顔を見て、驚いた。

なんと湊の頬が赤く染まっているのだ。


(耳まで……赤い……え……まさか、照れてる……?)


驚いた。
この一週間、ずっとドキドキさせられ赤面させられていたが、こんな湊を見るのは初めてだった。

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