イジワル社長は溺愛旦那様!?
その日の夕方、朝陽が大きな荷物を抱えて湊のマンションにやってきた。
夕妃がお昼にLINEをした時点で、湊から連絡は来ていたらしい。
「今日はこっちに泊まって、明日直接学校行くから」
【ご迷惑かけてない?】
メモを差し出すと、
「まさか~」
朝陽は肩をすくめた。
彼女との短い同居生活は楽しかったらしい。満面の笑顔だ。
「そういう姉ちゃんこそ楽しかった?」
(楽しかったかって……なによ)
弟のその意味深な微笑みに、夕妃はバシッと背中を叩いて、そのままキッチンへと向かった。
「今日のメシなに? あ、すき焼きだ」
荷物を部屋に置いて、戻ってきた朝陽がキッチンにやってくる。用意してある食材を見てメニューがわかったらしい。
弟の言うとおり、夕食はすき焼きの予定だった。
「なにかと姉ちゃんはすき焼きにするよな」
隣で下ごしらえを手伝いながら、朝陽がつぶやく。
「俺の卒業式とか、入試とか、入学式とか」
そういわれてみれば、確かに節目はすき焼きだったような気がする。