イジワル社長は溺愛旦那様!?
Changing the subject
いきなり呼び出されてなにかと思ったら、食事のお誘いだった。
「今晩、どう?」
「今晩……?」
「だから、一緒に食事しようよ。予定ないでしょ」
てっきり作成した書類になにか不備があったのだと思った夕妃は、目が点になった。
桜庭麻尋は、夕妃が勤める事務用品通販会社の親会社からやってきた。
二十八歳で営業主任と聞いていたので、それなりに出来る人なのだろうと思っていたが、まさか会議が始まる前にこんな訳の分からないことを言われるとは思わなかった。
「あの……なにか不備があって呼び出したわけではないのですか?」
会議室の内線から、直接夕妃のデスクに電話をかけてきたのである。
《すぐに来て》と言われたら、当然業務だとしか思わないだろう。
ぽかんとする夕妃を見て、桜庭はふっと笑って肩をすくめた。
「いやいや、わざわざ呼び出したんだから違うでしょ」
「はぁ……」
(わざわざ呼び出したんだから仕事だと思ったんだけど……)
「実は今日、モデルの女の子と食事に行く予定だったんだけど、海外の仕事が入ったらしくって、キャンセルになってさ。もう予定開けちゃってるし、そこのレストランすごい人気で、なかなか予約取れないし。三谷さん、そういうとこ、行ったことないんじゃない? 連れて行ってあげるよ」