イジワル社長は溺愛旦那様!?
上司と部下で、最愛の人
その後、夕妃は急ピッチで湊に仕事のノウハウを叩き込まれ、それから人災派遣会社に登録し、エールマーケティングの社長秘書として湊のそばで働くことになった。
(そうそう……私たちが初めて一線を越えたのって、あの怒涛の日々の最中だったわ……)
夕妃はいろんなことを懐かしく思いながら、秘書室でお礼状の最後の一枚を書き終える。
元婚約者から逃げ、湊に拾われ、彼と結婚してはや半年。
気が付けば秘書の仕事もそれなりに――とりあえず湊が求めるレベルになんとか追いつこうと日々頑張っている。
(しかも湊さん、私を秘書にしたら私情を挟むかも~なんて言っていたのに、まっっったくそんなことないし。むしろ徹底して厳しいし……鬼みたいだし……いや、そんな湊さんも素敵だけど)
出来上がったお礼状に封をして、夕妃は手元の時計を見た。
ちょうど終業時間の、三十分前だった。
「恭子さん、私これ本局に行って出してきちゃいますね!」
「じゃあそのまま直帰する?」
「いえ、戻ってきます。まだ時間ありますし」
郵便局の本局はエールマーケティングから歩いて十分もかからない。ちなみにチェーロよりも手前だ。
夕妃はお礼状をまとめて会社の封筒に入れ椅子から立ち上がると、手袋をつけ、コートを羽織り、ミニバッグを持って秘書室を出た。