イジワル社長は溺愛旦那様!?

苦笑いしながら、会釈して門脇の隣を通り抜けようとしたのだが――突然、後ろから引っ張られて、大きくよろめいてしまった。

なんと門脇が、左手ですれ違いざまに夕妃の腕の関節をつかんでいたのだ。


「なっ……」


夕妃は驚いて、腕をつかまれたまま振り返る。
さすがにぶしつけではないかと、口を開きかけたが。

「それって――結婚しているからですか?」

と、門脇が顔を寄せ、ささやいた。


「え……?」


(なぜ、私が結婚してると……)


指輪もしていないのに、なぜ結婚しているとわかったのだろう。


「――自分だけ幸せになって、いいんですか」
「あなた、なにを……」


なにを言われているのか、わけがわからない。

けれど確実に、この状況がよくないということは、本能でわかる。


「私、あなたたちの結婚式にいたんですが、覚えてらっしゃらないみたいですね」
「えっ!」


門脇の発言は、頭からバケツ一杯の冷水をいきなり浴びせられたような衝撃を、夕妃に与えた。

湊とはいずれ落ち着いたらと話していて、まだ結婚式をしていない。
なのにこの男は、『あなたたちの結婚式にいた』という。

それはイコール、夕妃と桜庭麻尋の結婚式にいたということだ。


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