イジワル社長は溺愛旦那様!?
「途中までなら手伝えるよ」
さすがにかわいそうになったらしい、恭子が手伝いを申し出てくれたが、
「大丈夫ですよ、恭子さん。お子さんのお迎えがあるでしょう。これは私の仕事ですし、まだ時間はありますから」
夕妃はそれをやんわりと断って、もう一度資料に最初から目を通す。
(全部って言ってたってことは、まずこのフォーマット自体が悪いってことなのかな……)
気が付けばあっという間に終業時間を三時間以上超えていた。
恭子も当然帰宅し、エールマーケティングビル内の明かりはほとんど消えている。
「よし、できたっ!」
まるで駄目だと言われしまったので、新しいアプローチから作った。
駄目だしされておいてなんだが、それなりだと思っていた部分を洗い直し、前よりもずっと見やすい資料になっていた。
「とりあえず明日の朝いちばんに見てもらおう」
夕妃はデータを保存して電源を落とすと、いそいそとコートを羽織り秘書室を出る。