イジワル社長は溺愛旦那様!?
(う……うそっ……!)
足がガタガタと震え始める。
(待って……待って……門脇さんが、あの、結婚式にいた……?)
ということは、空港で話しかけられた時から、わかっていたということなのだろうか。
だが出張が決まったのはいきなりだった。それに二度目のカフェでの再会は、完全なオフだったはずだ。始終見張っていないと、そんなことはできないだろう。
でも、少なくとも今日は、偶然じゃない。わかって近づいてきた。
それは、なんのために?
「あっ……あのっ……」
血の気が引いて寒いくらいなのに、なぜか全身から汗が噴き出す。
今にも倒れそうだった。
「待って、怖がらないでください。あなたに危害をくわえるつもりはみじんもありません。少しお話しできませんか。そこで、いいですから」
門脇は通りの向こうにあるコーヒーショップを指さした。
「お話……?」
夕妃はほんの少しだけ冷静になって、顔をあげる。
【自分だけ幸せになっていいんですか】
門脇の言葉が頭の中で響く。