イジワル社長は溺愛旦那様!?
「今さらですが、私の名刺は偽物です」
「は?」
いきなりの告白に、夕妃は目を丸くした。
「本職は、あなたの元婚約者の会社が複数抱えている、調査会社のひとつです。まぁ、簡単に言えば、桜庭さんに雇われた、何でも屋のようなものでして」
「じゃあお名前も門脇さんではなくて……?」
「いえ、まぁとりあえず門脇でいいですよ。ちなみに結婚式では、出席者ではなく、現場の雑務などしておりました。何でも屋ですからね。そしてあなたを担いで逃げた弟さんを止めようとして、簡単に振り切られて、かなり、どやされましたが……」
門脇は笑って、長い脚を組んだ。
外資系サラリーマンが嘘だと言われても、そういったなりはとても決まっている。
偽物のサラリーマンだと言われて、いよいよ目の前にいるこの男の正体が、わからなくなった。
「だいたい二か月くらい前からでしょうか。桜庭さんからあなたのスケジュールを渡されていて、毎日見張って、折を見て近づけと言われていました」
「出張にも……?」
スケジュールを渡されていたという言葉に、胸の奥がヒヤッとする。
自分では気づかないうちに、見られていたというのはやはり恐怖だ。