イジワル社長は溺愛旦那様!?

「エールマーケティングレベルになると、社長のだいたいの予定というのは、わかるものなんですよ。横のつながりがありますでしょう。だから京都の御大に呼ばれたときもね、真夜中に連絡があって……早起きが苦手だったから、困りましたけど」


門脇はアハハ、と笑いながら、首のネクタイを引っ張ってゆるめたあと、胸元から煙草をライターを取り出して、唇にくわえた。


「桜庭さんは、いまどうしているんですか」
「あのあと、中国に行きましたよ。まぁ、結婚式自体うちうちだったので、本社内でもそう問題にはなりませんでしたし……」


そして門脇は、新しい煙草をゆっくりとふかす。


「婚約破棄の慰謝料や、その他もろもろ、双方の弁護士でさっさと話はつきました。桜庭さんのご両親や一族にしても、新郎側に、余計な腹を探られたくはないって事案が、過去に相当数あったわけで、なかったことにしてしまうのが一番傷が浅いということになったんでしょう」
「では……桜庭さんはなぜ私を見張るんですか」
「会いたいそうです」
「会いたい……? 私を引きずってでも中国に連れて行くつもりですか」
「いやいや、さすがにそれは犯罪でしょう。まぁ、嘘はつきましたけど……そこは申し訳ない」


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