イジワル社長は溺愛旦那様!?
その日、湊が帰ってきたのは、日付が変わったずっと後だった。
ソファーでうとうとしていた夕妃は、湊にお姫様だっこでベッドまで運ばれていた途中で、はっと目を覚ました。
「あ……」
「起きた?」
夕妃をベッドに横たえて、湊はネクタイを緩めながら、
「ただいま、俺の可愛い夕妃ちゃん」
と、上機嫌に微笑み、ベッドの縁に腰を下ろすと、体を近づけて夕妃の頬にキスをする。
(夕妃ちゃん、だって……珍しい……っていうか、可愛いかも)
軽くアルコールの香りがする。声の調子も少し弾んでいる。
先日のエキスポから仕事が忙しくなっていたので心配していたが、今日の会合はそれなりに実りがあったのかもしれない。
(この様子なら話せるかな……)
夕妃は若干緊張しつつ、ベッドの上に正座した。
「湊さん、話があるんだけど」
「んー? なにかおねだりかな」
「おねだりではなくて……今日ね、桜庭さんに頼まれた調査会社の人に、話しかけられた」
「――は?」
その瞬間、機嫌よく夕妃を見つめ、髪を撫でていた湊の表情が一変した。
「どういうこと」
その射貫くような瞳に、自然と背筋が伸びた。