イジワル社長は溺愛旦那様!?
「き、聞いて! 本人が来たわけじゃないの。代理っていうか、桜庭の……調査会社?の人で……その、桜庭さん、中国から、帰ってきてるんだって。それで、私に会いたいって言ってるって」
「まさかと思うけど、夕妃、会うつもりなの」
「そのつもりでいる……だから湊さんに話さなきゃって思って」
「――それ本気で言ってる?」
湊の眼差しがさらにきつくなった。
湊は普段とても温厚で、穏やかで、紳士だ。
だから、こんな湊を怒らせるようなことを言っている自分が明らかに悪い――とわかっているのだが、夕妃もそこは、引けなかった。
「ほっ、本気だよ。こんなこと冗談じゃ言えないよ」
「はっ……意味が分からないな」
湊はベッドから立ち上がって、大きく首を振った。
「いいか。あいつはきみを精神的にも肉体的にも追い詰めた。腹の底から女性を痛めるのが大好きな最低最悪な男だ。会えばなにをされるかわからないんだぞ」
確かに自分は桜庭にいいように扱われて、玩具になる寸前だった。逃げなければ今頃、どうにかなっていたかもしれない。そのことは疑ってはいない。
「それは、わかってる。だからふたりきりでは会わないよ、閑くんの事務所とかで、閑くんの立ち合いで会えたらって――」
「わかってない!」