イジワル社長は溺愛旦那様!?
「男は心底惚れた女の前だと、取り繕えなくなる。冷静でいたくても、頭の中がその女のことでいっぱいになって、気を引きたくて、なんとか腕の中に閉じ込めておきたくなって、自分だけを見つめてほしくて……必死になったあげく、時々ネジが外れる」
「湊さんも……?」
「そうだ。昨晩の湊は、お前のことを考えすぎて、ネジが外れた。でも慌ててはいつくばって、ネジを拾って巻きなおした。湊がすごいのは、誰にも言われずにそれがちゃんとできることだ」
基はクスッと笑って、顔を上げ、脚を組む。
「ちなみに俺は、昔から、沙耶にすこぶる怒られないと気が付かないことが多々あった。本当に、沙耶に見捨てられなかったのは奇跡だったよ」
「基さん……」
基はあくまでも冗談ぽく、優しく夕妃を諭す。
「わかってるとは思うが、あいつも人間だ。完璧じゃない」
「はい……私も、もっとうまく言えたらよかったのに……全然言葉に出来なくて。湊さんを誤解させてしまったんです。あんなこと、言わせたくなかった……」
「そうか」
基は豪華な花のようににっこりと笑って、そして涙目になっている夕妃の頭を、ぽんぽんと、叩いた。
「じゃあ大丈夫だな」
「心配かけてすみません……」
「いや、心配なんかしてないよ。なんてったってお前は湊が選んだ女性だからな」
そして基は「朝早くに悪かったな」と社長室を出て行く。
夕妃も彼のあとを追いかけながら問いかけた。