イジワル社長は溺愛旦那様!?

「さいきんどう?」とか「寒くなってきたね」とかその程度の会話だが、彼から告白されて以降、まともに話すのは久しぶりだった。


「これからどっか寄る感じ?」


澄川がさらっと予定を聞いてくる。

表向きはなんともない様子だが、実は澄川の気持ちを知っていたらしい恭子から、澄川が夕妃に決まった相手がいないのなら、まだチャンスがあるのではと悩んでいたと聞かされていたのだ。

正直いつも自分の周囲のことばかりでいっぱいいっぱいで、まったく澄川のことを考える余裕がなかったのだが、告白されたとき、付き合えないと濁すだけだったことを思い出していた。


(今さらかもしれないけれど……)


夕妃は勇気を振り絞って、ビルを出たところで立ち止まり、

「澄川さん」

と彼を呼び止めた。


「うん?」


不思議そうに立ち止まる澄川を、夕妃は見上げる。


「あの……こんなこと言われても、今さら困るかもしれないんですけど。実は私、半年前から、その、大好きな人と、一緒に住んでいて……」
「ええっ!」


澄川の目がまん丸に見開かれた。


< 320 / 361 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop