イジワル社長は溺愛旦那様!?

(また明日……かぁ)


人は完璧じゃない。
人生だって、いいことも悪いことも半分で、回り道をすることもある。

けれど、また明日と笑える毎日を送れたら、それはどれだけ幸せなことだろう。


「ああ……そうなんだ」


私、今さらだけど……すごく……幸せなんだ。


夕妃の中で、なにかがストンと落ちた気がした。



閑が働いている法律事務所は、エールビルから三十分もかからない場所にあった。
下町情緒あふれる風景と、近代化が進んだ建物の隙間に五階建てのアールデコ風のビルが立っており、なかなか風情がいい。

階段を登り、二階にあがると【槇(まき)法律事務所】と書いてあるドアが目の前にあった。


(ここだ……)


夕妃は緊張しながらドアを開けた。


「こんばんは」


目の前にはL字型のカウンターがあり、その向こうにデスクが六つほど並んでいる。


「あっ!」


すると、夕妃を待ち構えていたのだろう、奥のデスクに座っていた閑が立ち上がって近づいてきた。

事務所の中には、閑以外には四十代くらいの渋い雰囲気の男性がひとりいるだけだった。


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