イジワル社長は溺愛旦那様!?

それまで難しい顔をしていたのに、夕妃を見てにっこりと笑う。彼の胸には弁護士バッジが輝いていた。


(あの人がこの事務所の代表の槇さんかな?)


そう思いながら、会釈する。


「夕妃さん、迎えに行ったのに」


閑はキラキラと輝くような笑顔で、夕妃の前に立つ。相変わらずの美青年ぶりがまぶしい。


「大丈夫ですよ。駅からすぐだったし」


夕妃は首を振りながら、改めて閑を見上げた。


「あの、それで……」


部屋の中を見回すが、それらしい人影はない。


「奥の応接室にいるよ」


閑は夕妃の言いたいことがわかったようだ。奥のドアを指さした。


「ありがとうございます」
「あと、湊ちゃんには?」
「メールですけど、伝えてます」


夕妃は今日仕事が終わったら、閑の事務所で桜庭に会うと湊に告げた。メールの返事はないが、自分は、湊の反対を押し切って、こうすることを選んだ。
だから今から起こることは全部自分の責任だ。


「なるほど。うん、わかった」


閑はあっさりとうなずいて、夕妃を奥の応接間へといざなう。
そしてドアの前で、緊張した様子の夕妃を見下ろした。


「ドアは閉めずに開け放っておくよ。そしてすぐそこに俺が待機してるからね」
「はい」


< 323 / 361 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop