イジワル社長は溺愛旦那様!?
それまで難しい顔をしていたのに、夕妃を見てにっこりと笑う。彼の胸には弁護士バッジが輝いていた。
(あの人がこの事務所の代表の槇さんかな?)
そう思いながら、会釈する。
「夕妃さん、迎えに行ったのに」
閑はキラキラと輝くような笑顔で、夕妃の前に立つ。相変わらずの美青年ぶりがまぶしい。
「大丈夫ですよ。駅からすぐだったし」
夕妃は首を振りながら、改めて閑を見上げた。
「あの、それで……」
部屋の中を見回すが、それらしい人影はない。
「奥の応接室にいるよ」
閑は夕妃の言いたいことがわかったようだ。奥のドアを指さした。
「ありがとうございます」
「あと、湊ちゃんには?」
「メールですけど、伝えてます」
夕妃は今日仕事が終わったら、閑の事務所で桜庭に会うと湊に告げた。メールの返事はないが、自分は、湊の反対を押し切って、こうすることを選んだ。
だから今から起こることは全部自分の責任だ。
「なるほど。うん、わかった」
閑はあっさりとうなずいて、夕妃を奥の応接間へといざなう。
そしてドアの前で、緊張した様子の夕妃を見下ろした。
「ドアは閉めずに開け放っておくよ。そしてすぐそこに俺が待機してるからね」
「はい」