イジワル社長は溺愛旦那様!?


「あの……」
「まさかあんたが会ってくれるとは思わなかったな」


夕妃を遮るように、桜庭が口を開く。


「もしかして俺に未練でも出てきた? 今思い起こせば、新しい男にはない刺激があっただろ?」


挑発する口調なのは相変わらずだ。

わざとだとわかっているが、やはり胸の奥が重くなる。


「違います。私、桜庭さんに謝罪しないままだったので、謝りたくて来たんです」
「へぇ……」


桜庭は上半身を起こし、ソファーにもたれるように背中を押し付けると、長い脚を組みなおして、目を細めた。


「じゃあ言わせてもらうけど。親類縁者の前で大恥かかされて、栄転の話もパーだしさ。ここの弁護士さん優秀すぎて、なぜかこっちも悪いみたいな雰囲気になって、身から出た錆だとか、ちょっと反省しろみたいなことになって、ほんと俺、最悪だったよ」
「……」


そして桜庭は、冷めた表情で夕妃を見据える。


「で、あんたはなんなの。ごめんなさいって言って、すっきりしたら終わり? 俺が絶対許さないって言ったらどうしてくれんの。土下座でもする?」
「――土下座したら許すんですか?」


夕妃が尋ねると、彼は唇の端をにやりと持ち上げた。


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