イジワル社長は溺愛旦那様!?
「桜庭さん、本当にごめんなさい。私はあなたと結婚すると約束しておきながら、土壇場で逃げました。そのあともずっと、あなたが怖くて、みんなが助けてくれるからそれに甘えて、逃げていました。でも、やっと……やっと……私、自分で立てるようになりました。だから謝ります。本当にごめんなさい」
夕妃は頭を下げたまま、言葉を続ける。
「許せないなら、ずっと、私に腹を立てていいです。私もそう簡単に、許してもらえるとは思ってなかったし……そのくらいのことをしたと思っています。仕方ないです」
「ちょっと待ってよ、開き直るつもりかよ!」
桜庭が立ち上がって、声を荒げた。
夕妃も顔を上げる。
テーブルを挟んだ向こうに、桜庭がいる。
瞳の瞳孔が開き、きれいに整えられた髪が乱れていた。
「開き直ってるのは桜庭さんですよね」
「なに?」
桜庭の顔色が変わった。
「だから……そうやって他人を遠ざけるようなことばかり言って。悪意を隠さずに、自分はこれでいいんだと開き直ってる。その開き直りに付き合わされる周囲の迷惑とか、考えたらどうですか? 土下座とか正直どうでもいいんでしょう。あなたはただ、私の困る顔を見たいだけよ。子供みたい」