イジワル社長は溺愛旦那様!?
「小さいころ、インコを買ってたんだ。小さくてかわいくて……ものすごくかわいがっていたのに、逃げてしまった。毎日泣いて暮らしたよ……羽根を切ったらかわいそうだから、しなかったのに。切ればよかったって、ものすごく後悔して……なんか急に思い出したわ」
そして桜庭は、顔を上げる。
「まぁ、そんなのどうでもいいけど……全然関係ないし」
どうでもいいという割には、桜庭はひどく落ち込んだ顔をしていた。
「私はあなたのインコじゃないけれど……幸せになってほしいって……心からそう思ってます」
それを聞いて、桜庭はふっと笑う。
「本気で言ってるっぽいな」
「本気です」
夕妃はまじめにうなずいた。
「ああ、そう……ほんっと、あんたって相変わらず、頭おかしいね。俺、あんたと話してると、なんか……頭のネジ外れる、気がするわ……」
桜庭はいつかと同じように、夕妃の目を見ながら、こめかみのあたりを指でくるくると回し――そしてそのまま、なにか言いたそうに唇を震わせた。
その切羽詰まったような眼差しに、ふと、そういえば桜庭はなぜ自分と会いたいと言ってきたのだろうかと、夕妃の心に疑問がよぎる。
「桜庭さん……あの」