イジワル社長は溺愛旦那様!?
夕妃は胸がいっぱいになりながら、顔を上げる。
「でも、さっきのふたりのやりとりを見ていて、思い出したんだ……。俺が愛した女性は、本当に優しい心を持った人だって。怒りに振り回されず、相手を思いやる、素敵な人だって。誇らしくなったと同時に、つまらない嫉妬で君を傷つけた自分にまた自己嫌悪だ……」
そして湊は大きなため息をついたあと、頬を傾け、ささやいた。
「俺こそ、許してくれるか」
「もちろんよ。愛してるもん」
笑ってうなずくと同時に、瞳をうっすらと濡らした湊が、「俺も愛してるよ」とつぶやいて、噛みつくようにキスをしてきた。
応接室を出ると、閑がカウンターにもたれるようにして書類をめくっていた。
手を繋いで出てきた湊と夕妃を見て、目を細める。
「湊ちゃん、今、いちゃついてたよね?」
「そんなわけないだろう。お前の気のせいじゃないか?」
「あー、やだやだ」
「世話になった」
湊は笑って、閑は肩をすくめる。
それから湊と夕妃は、槇先生と閑にお礼を言い、事務所をあとにした。