イジワル社長は溺愛旦那様!?
ビルを出ると外は真っ暗だった。大通りを歩きながらタクシーを探す。
だがなかなか空車がつかまらない。
湊は周囲を見回した後、夕妃の手を引いて、顔を覗き込んできた。
「夕妃」
「なあに?」
「こんなことを言うのはなんだが、家まで待てない」
「え……?」
「あそこに入ろう」
湊がもう一方の手で、通りの向こうの路地に入ったところにある、派手な照明の建物を指さした。
「あ、あれって……っ!」
(いわゆるラブホテルというものでは……!)
「いや?」
少し心配そうに尋ねられたが、夕妃はプルプルと首を横に振った。
「いやじゃないよ……」
たしかに夕妃にとっては生まれて初めての体験だ。
とはいえ断る理由はない。夕妃は心臓をドキドキさせながら、湊とつないだ手に力を込めた。
夕妃だって、湊と一刻も早く愛し合いたいという気持ちは同じだと思ったのだ。
その時は――。