イジワル社長は溺愛旦那様!?

ビルを出ると外は真っ暗だった。大通りを歩きながらタクシーを探す。
だがなかなか空車がつかまらない。

湊は周囲を見回した後、夕妃の手を引いて、顔を覗き込んできた。


「夕妃」
「なあに?」
「こんなことを言うのはなんだが、家まで待てない」
「え……?」
「あそこに入ろう」


湊がもう一方の手で、通りの向こうの路地に入ったところにある、派手な照明の建物を指さした。


「あ、あれって……っ!」


(いわゆるラブホテルというものでは……!)


「いや?」


少し心配そうに尋ねられたが、夕妃はプルプルと首を横に振った。


「いやじゃないよ……」


たしかに夕妃にとっては生まれて初めての体験だ。

とはいえ断る理由はない。夕妃は心臓をドキドキさせながら、湊とつないだ手に力を込めた。

夕妃だって、湊と一刻も早く愛し合いたいという気持ちは同じだと思ったのだ。

その時は――。





< 334 / 361 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop