イジワル社長は溺愛旦那様!?
番外編「上司と部下で、新婚で」

夕妃は枕を抱え、顔を押し付けて叫んでいた。


「もうっ……無理っ!」


なにが無理かと問われれば、入籍直後から始まった、湊の“それなりの秘書になるまでの詰め込み教育”である。

入籍してからすでに一週間、秘書としての基本的な実務はもちろんのこと、総合的なビジネスマナーからはてはペン字まで、寸暇を惜しみ、せっせと勉強をしているのだ。

もちろん湊はエールマーケティングの仕事があるので、日中は出かけているが、帰ってきたら、彼の添削指導が待っている。
今日もビシバシしごかれた。
湊に添削されているときは、本気で生徒の気分になる。ちょっぴり涙目になったのはここだけの話だ。


(一応私たち、新婚よね……?)


夕妃はハァ、とため息をつきながら、二階の自分の部屋のベッドの上を、何度も、ゴロゴロと転がっていた。

結婚するまでは毎晩一緒に眠っていたが、今はひとりで眠っている。
湊から自分のベッドで眠るよう言われたわけではなく、夕妃がそうさせてくれと言ったのだ。


(そうじゃないと頭が切り替えられないから……でも、失敗したかも……)


夕妃は悶々としながら、ベッドの上をまた、転がる。


< 342 / 361 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop