イジワル社長は溺愛旦那様!?
「夕妃」
湊が優しく名前を呼ぶ。
「俺が君を抱きしめたいだけだから。おいで」
(そ、そんなこと言って……!)
その一言で、夕妃はそれまで我慢していた何かが決壊したような気がした。
バタバタと、足早に湊のもとに近づいていき、そしてそのまま彼の胸元に飛び込み、背中に腕を回した。
そしてぎゅうっと抱き着く。
湊の匂いがした。
スーツを着ているときの湊はすらりと背が高いので細身に見えるが、腕を回すとそのたくましさに驚いてしまう。
胸板は分厚く、体は引き締まり、自分とはまったく違う、男の体をしている。
(たった一週間くらいで、こんなに懐かしい気持ちになるなんて……)
泣きたいような嬉しいような、複雑な心境だ。
そのままグイグイとしがみついていたら、上からクックッと笑い声がした。
顔を上げると、湊が苦笑いしている。
「なっ……なんで笑うの……」
「いや? そんなにひとりが寂しかった?」
ずばり言い当てられて耳が赤くなるが、ここまできて、ひとまわりもふたまわりもうわてな湊に今さら取り繕っても仕方ない。
「さびしかったです……」