イジワル社長は溺愛旦那様!?
朝陽が愛用しているうさぎのスタンプが親指を立てながら跳ねる。
「かわいい……」
ふふっと笑って、スマホをバッグにしまい込んだ。
「――楽しそうですね」
「えっ?」
顔を上げると、斜め前の一人用ソファーに座っていた三十代半ばくらいの男性が、夕妃を見て笑っていた。
湊と同じように、組んだ膝の上に、タブレットを乗せている。
フルオーダーの仕立てのいいスーツに身を包み、全身からみなぎるような気迫を感じる。
異国の地を感じさせる華やかな顔立ちで、ハーフかクォーターなのだろうか、かすかに浅黒い肌をしていた。
(にやにや笑ってるところを見られてしまった……)
「すみません、その、弟がかわいくて……」
(って、朝陽くんのこと、そんなのこの人に関係ないし……なに言ってるんだろう、私。恥ずかしい……)
夕妃は頬が熱くなるのを感じながら、小さく頭を下げた。
「いえ」
彼はクスッと笑って、それから組んでいた脚を下ろす。