イジワル社長は溺愛旦那様!?
夕妃も会釈をして男を見送る。
(さすがにどこかで会えることなんてないだろうけど……でも、成功している人ってやたら人懐っこかったりするんだよね。本当に会えたりして)
飛行機は一時間で大阪に着くが、結局それ以外にも時間がかかる。新幹線とそう時間が変わらないのになぜ飛行機を選んだのだろうと思っていたが、どうやら連れがいるらしい。
「みなとー、ひさしぶりー!」
三十分ほど喫茶室の入り口付近のテーブルで時間をつぶしていると、待ち合わせの相手らしい男が、にこやかに近づいてきた。
すらりとした長身を黒のロングトレンチコートで包んだ、いかにも優男で甘い雰囲気の美男子だ。
夕妃も、彼のことは湊から飛行機の中で聞いていた。
山邑始(やまむらはじめ)。年は湊のひとつ上で、世界中にリゾート展開をしている山邑リゾートの副社長だ。
どこかつかみどころがない風情だが、ここ十年で山邑リゾートを大きくしているのは彼だという。
「始さん、お久しぶりです」
湊が立ち上がるのと同時に、夕妃も立ち上がって頭を下げた。
「ほんとお久しぶりだね。えっと……」
思案顔になる始に湊が補足する。
「小鷹(こたか)さんの披露宴以来ですよ」
「ああ、もうそんなになるんだ」