イジワル社長は溺愛旦那様!?
(小鷹さんって、老舗寝具メーカーの【KOTAKA】の御曹司のことかな……)
名前は知っているが、もちろん少し前まで普通のOLだった夕妃に面識はない。
だが湊と始が先輩後輩の関係なら、小鷹の御曹司もそれに近い関係なのかもしれない。
軽く雑談した後、始は、湊の隣に緊張して立っている夕妃に目線を向けた。
その視線を受けて夕妃が挨拶をしようとしたら、湊が先に口を開いた。
「彼女は俺の妻です。ですが今日は秘書として同行していますので、ここだけの話にしておいてください」
湊の言葉に夕妃はハッとして、
「初めまして、妻の夕妃です」
と頭を下げた。
(なるほど、仕事の付き合いはあるけれど、それ以前に先輩後輩だから、妻って紹介するんだ)
あまりこういう場で妻と紹介されたことがない夕妃は、それだけでそわそわと気恥ずかしい気分になる。
だが始はいたって明るく、笑顔になった。
「ああ、君が噂の奥様かぁ。会えて嬉しいよ」
「噂?」