イジワル社長は溺愛旦那様!?
梅田のホテルで行われたランチ会は三時間ほどで終了した。
今日のメイン業務はこれだけだ。
たったこれだけのために東京から呼ばれたのかと思うと拍子抜けだが、こういう時間の積み重ねがなにか新しい仕事につながるのかもしれない。
夕妃は別室で食事をとり、いつも通り仕事をこなす。
そしてランチが終わったと聞いて、会が行われていた展望レストランに向かった。
老舗ホテルの展望レストランは見晴らしがよく、個室ではないが観葉植物で区切られた奥で談笑する声が聞こえる。
そっと顔をのぞかせるとそこには総勢三十人ほどのスーツ姿の男女がいて、和気あいあいとした雰囲気だ。
「三谷君」
夕妃の姿を目ざとく発見した湊が軽く手を挙げる。
彼のそばには始の姿もあった。
「はい」
湊のもとへと向かうと、彼は夕妃を連れて談笑の輪から離れ、窓際に立つ。
ふたりの前には、薄い水色をした青空が広がっていた。
仕事の指示だろうと判断した夕妃は手帳を広げる。
「これから京都に行くことになりました」
「はい」
(次は京都かぁ……本当に目まぐるしいなぁ……)
「ですがあなたは来なくてよろしい」