イジワル社長は溺愛旦那様!?
「えっ……?」
わざわざ東京からここまで来たのに、京都にはついてこなくていいと言われるとは思わなかった。
夕妃は目を丸くして湊を見上げるが、湊は特にこの場で説明する気はないようだ。
シルバーフレームの眼鏡を指で押し上げた後、
「自由に過ごしてくださって結構ですよ」
と、さらりと告げて、踵を返しまた集団の中へと戻っていった。
(自由に過ごしていいって、どういうことーっ? 私が自由に過ごしている間、湊さんは京都でなにをしているの?)
ものすごく問い詰めたい気分になったが、今回の出張に関しては、夕妃自身、
『一切プライベートは差し込まず秘書に徹してお供する』
と湊に宣言しているのである。
とてもこの状況で真意を問うことは出来なかった。