イジワル社長は溺愛旦那様!?
「自由に過ごしていいって言われてもなぁ……」
まさか出張に同行した先でオフになると思っていなかった夕妃は、ホテルからハイヤーに乗り込んだ湊を見送ったあと、スーツ姿のままホテルのエントランスにある喫茶室でコーヒーを飲んでいた。
関西に親しい友人でもいれば声を掛けることもできたかもしれないが、残念ながらそんなあてはない。
だがホテルの喧騒の中、コーヒーを飲むだけでこのままボーッと一日を過ごすのももったいない気がした。
(朝陽くんのお土産、探しに行こうかな。いやでも三日目の朝でいいよねぇ……荷物になるし)
忙しそうに行きかう人々を眺めながら、あてもなくそんなことを考えていると、
「――あれ、ゆうちゃんどうしてここにいるの?」
頭上から軽い声がして。
(ゆうちゃん……?)
顔を上げると、なんとそこに始が立っていたのだった。
「えっ、山邑様?」
てっきり湊と一緒に行動していると思ったので、夕妃は驚いて立ち上がる。