イジワル社長は溺愛旦那様!?
上司と部下に、なる前の
ぜいたくに重ねられたレースとフリルでずっしりと重いドレス。
首にかかった大きなダイヤモンドのネックレス。
歩きにくいことこの上ない、八センチのヒール。
髪は無理やりひっぱりあげられて、こめかみはずっと痛かった。
でもこれが『結婚』だと思っていた。
我慢と忍耐の上に、私の未来はあるのだと納得して、受け入れていた。
だけど――。
「姉ちゃん!」
最愛の弟の叫び声に、牧師の前に立っていた夕妃は、ホテル内のチャペルで思わず振り返っていた。
学生服姿の朝陽が、仁王立ちしている。
突然の朝陽の行動に、チャペル内の列席者がざわめいた。
誓いの言葉はこれからで、チャペルは荘厳な雰囲気に包まれていて、朝陽の姉への呼びかけは、明らかに場違いだった。
「なんだ、あいつ……」
隣に立っている青年が、怪訝そうに眉を寄せる。
夕妃は慌てて、新婦側の一番前に座っていたはずの朝陽に、座るように手を伸ばす。
「朝陽くん、話ならあとから聞くから……」
その瞬間――。