イジワル社長は溺愛旦那様!?
だが朝陽は肩に姉をかついだまま、列席者に向かって堂々と言い放つ。
「すみません、結婚やめます!」
【光のチャペル】と銘打たれたそこは、太陽の光をうけてすべてがキラキラと輝いており、学生服姿の朝陽の姿は、呆然と立ち尽くす新郎よりもずっと、存在感があった。
「なっ、お前っ……!」
そこでようやく、現状を認識した新郎の男が、顔を真っ赤にして朝陽にとびかかろうとしたのだが、ラグビー部の主将で、身長一九〇センチ超えの朝陽を止められる人間は、残念ながらここにはいない。
あっさりと身をひるがえして、朝陽は夕妃を担いだまま、駆け出していた。
「あ、朝陽くん、だめだよ! おろしてっ!」
「姉ちゃんは黙ってろ! 舌かむぞっ!」
都内の一等地にある高級ホテルを飛び出して、朝陽は走る。
夕妃は朝陽のたくましい肩に両腕をつき、上半身を起こしながら振り返り、朝陽の耳元に叫ぶ。
「朝陽くん、ど、どこにいくのっ?」
いったいこの先どこに、自分たち姉弟が逃げる場所があるというのだ。