イジワル社長は溺愛旦那様!?
両親は夕妃が中学校に入ったときに離婚し、子供たちはそれぞれに引き取られた。
夕妃と朝陽が再会したのは、夕妃が短大を卒業する直前だ。
いろんなことがあり、ふたりで生きる決意をしたのが、四年前。
それから今日までふたりで慎ましく生きてきた。
「朝陽くん、私は結婚していいんだよ、朝陽くんが気にすることなんてないんだよっ!」
全てが平凡な自分と違って、朝陽には将来がある。
あちこちの大学から、来年はうちのラグビー部に来ないかと話が来ているのだ。
なのに朝陽ときたら『ラグビーは高校で終わり。大学に行くつもりはない』と突っぱねてしまった。
確かに朝陽という人物をかって「ぜひうちに」と言ってくれる企業はあるのだが、夕妃は朝陽が本当にラグビーが好きなことを知っているので、とても我慢ならなかった。
「うるさいっ、俺がよくないし、めっちゃ気になるんだっ!」
「ばかっ、朝陽くん、こんなことしたってみんなに迷惑かけるだけなんだよ!」
夕妃はこぶしをにぎり、ドスドスと朝陽の背中を殴りつけるが、女の細腕でいくら殴ったところで朝陽にまったくダメージはない。
それどころか、余計反発心を起こさせてしまったようだ。
「みんなって誰だよ、そんなの知るか!」
猪突猛進を絵にかいたような勢いで、グングンと朝陽は加速し始める。