イジワル社長は溺愛旦那様!?
ラグビー部の朝陽の体力は底なしだ。
たとえ夕妃を担いでいるとはいえ、おそらく十キロくらいはこの調子で走るに違いない。
日曜日、大安吉日の都内を、学生服の青年がウエディングドレスの女を担いで全力疾走する様子はあまりにも場違いで、誰もが驚いたように道を開ける。
「なにかの撮影かな?」
と、スマホを向ける通行人もいて、夕妃は気が遠くなった。
今さら戻ったとしても、結婚式の続きをすることは可能なのだろうか。
自分が社会的に罰を受けるのはまだいいが、朝陽が責められるのはぜったいに避けなければならない。
(いざとなったら……ど……土下座とか……)
もちろん土下座なんてしたことはないが、新郎側は社会的地位が高く、たとえ未成年の弟がやったこととはいえ、花嫁にあの場で逃げられるなどとても許せないだろう。
土下座で済むとはとても思えなかった。
(やっぱり早く戻らなきゃ!)
夕妃は心を決めて、朝陽の耳をつかむ。
「こらっ、朝陽、放しなさいっ!」