イジワル社長は溺愛旦那様!?

(本当に? 大丈夫なの……?)


思わずオドオドと、彼と弟を見比べる夕妃だが、結局朝陽に背中を押され、病室に戻ることになった。


(朝陽くん……大丈夫かな……)


夕妃はベッドにもぐりこんで、緊張した状態で天井を見上げていた。

朝陽は文武両道を絵にかいたような優等生で、現在通っている高校でも成績は上位で頭もいいのだが、どうも自分が絡むと冷静さを失うことがある。

おかしなことを言い出して、あの人に迷惑をかけないかと心配になった。

目を閉じると、朝陽と一緒に別室へと向かっていった、眼鏡の彼の姿がまぶたに浮かぶ。


(そういえば名前すら聞くのを忘れていた……。いや、声がでないから聞けないんだけど……)


ため息をつきながら、手の甲をまぶたの上に乗せる。

結婚式から逃げ出した。
見ず知らずの人を巻き込んで、こんなことになったあげく、声も出なくなった。


(この先、どうなるんだろう……)


漠然とした不安に押しつぶされそうになりながら、夕妃はベッドの中で丸くなる。

じんわりと涙が浮かんだが、そのまま枕に頬を押し付けていた。



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