イジワル社長は溺愛旦那様!?
それからしばらくして――。
「姉ちゃん、起きてるか」
と、朝陽の声がした。
夕妃が体を起こす気配を感じ取ったのか、ゆっくりとドアが開き病室内に明かりが灯る。
朝陽がひとりで病室に入ってきて、ベッドのそばに置いてあった椅子に腰を下ろした。
「話は終わったよ」
その言葉に、夕妃は眉をひそめつつあたりを見回し、小さなテーブルの上にブロックメモを発見した。
ボールペンと一緒にそれをとり、言葉を書きつける。
【なんの話をしたの?】
朝陽は手元のメモを覗き込んだ。
「――姉ちゃんがクソみたいな男に見染められて、俺の将来と引き換えに結婚しようとしたから、逃げてきたってこと」
「……っ!?」
【そんなことまで話したの!?】
いくら本当のこととはいえ、それはとても他人に話せる内容ではないはずだ。
だが朝陽はたいして悪いと思っていなさそうだ。