イジワル社長は溺愛旦那様!?
「でも俺は、ふたりで野垂れ死にするつもりはないから。言い方は悪いかもしれないけど、利用できるものは利用したい」
と、きっぱり言い放つと、椅子から立ち上がって、夕妃の頭をくしゃくしゃと撫でた。
結局、自分がふがいないから、こういうことになってしまうのだ。
夕妃は病室から出て行った弟の広い背中を見送って、深くため息を漏らす。
(明日から普通に学校があるのに、朝陽くん大丈夫かな……)
あれこれ考えていると、胃のあたりがキリキリと痛くなる。
天井を見上げつつ、てのひらでさすっていると、またドアがノックされた。
「三谷さん、夕食ですよー」
まず最初にカートを押して入ってきたのは看護師で、夕妃は体を起こし、すみませんという気持ちで頭を下げる。
「失礼します」
だがなんと、看護師の後ろから神尾が姿を現した。
「……っ!」
驚いて目を丸くする夕妃に、神尾がニコリと笑う。
「少し様子を見に来ただけです」
(すみません、すみません……!)