イジワル社長は溺愛旦那様!?
胃のあたりがヒヤッと冷たくなった。
だが謝ろうにも言葉が出てこない。
無言でペコペコする夕妃だが、神尾は特に気にした様子もなく、ベッドの上に食事を並べて出て行く看護師を見送ると、さっきまで朝陽が座っていた椅子をさらにベッドサイドに近づけて、腰を下ろす。
「うちの食事は、病院食にしては悪くないって患者様にも評判なんです」
神尾の言葉に夕妃は簡易テーブルの上を見る。
白いごはんに、お味噌汁。魚の煮つけに、白和え。そしてカットしたリンゴが添えてある。
朝からなにも食べていないから、胃は空っぽのはずだが、空腹感は残念ながらわいてこない。
「あまり食欲はないかもしれませんが、なにか口にいれたほうがいいですよ」
(確かにその通りだ……)
神尾の言葉に、夕妃はうなずいて箸をとる。
どれも一口ずつ食べて、それからちらっと神尾を見る。様子をじっと見ていた神尾がニコリと笑った。
「りんごはどうですか?」
(りんご……)
カットリンゴを口にすると、しゃりっといい音がして、爽やかな甘みと酸味が口に広がる。